一人で生きていくということ [随筆]

 連日の猛暑のなか、また新しい一日が始まります。

日は変わっても私の毎日にさしたる変化もありません。今はオリンピックに熱中

日本選手の活躍が素晴らしくて、明け方まで頑張るので寝不足が続いています。

 エアコンの効いた涼しい部屋で手が赤くなるほど拍手をしたり、ときには大声で

応援しても、うるさいと文句を言う人もおりません。

 家のことに関しては庭の木の水やりも、延びて来た雑草を何とかと思うだけで

自分でなんとかしょうという気は毛頭ないノラの私です。

 そこで草引きは去年もお願いしたシルバー人材センターに連絡しておきました。

下見にきた人は私と同年代くらいの男性で、暑いので早朝来てもいいですかと

のこと、私も承知してこちらの都合の悪い日だけをお知らせしておきました。

 二、三日して朝ラジオを聴きながらうとうとしていると、下の方でごそごそと作業を

している気配がします。

 わが家の斜め後の土地で野菜を作ってい人がいて、作業をする時は朝早くから

バイクでやってきて夕方まで働いています。その人が来ているのだと思いました。

 しかしどうももっと近くで音がします。えっ! もしかしてわが家? 私は飛び起きて

下りて行きました。

 なんとわが家の庭でおじさんが作業しているではありませんか。

何の連絡もなかったので驚きました。車庫のカンヌキも上手に開けて涼しい木陰で

草引きを始めていました。

 「お早うございます。早かったので声もかけませんでした。」と笑っています。

 二時間くらいせっせと作業をして、続きは明日にしますと帰って行きました。

 次の日は私も早起きしておじさんを迎えました。

 庭には所せましとプランターや植木鉢がいっぱいあります。正確には元は全部

花や木が植わっていたのです。これらの鉢から土を出してきれいにして貰えない

かとお願いしました。

 おじさんはこんなにたくさん花を作っていたのに枯れてしまったんだねえと言い

たげに私をみていました。

 今はベゴニアや君子蘭やシンビジュウムのような強い生命力のあるものだけが

水もろくに貰えないのに息も絶え絶えに生き残っています。

 それでも季節にはきれいな花を見せてくれるのです。私がやることは寒くなったら

室内にいれるだけ。

 それでもさすがに今年の暑さにはみんな葉っぱを黄色くして辛そうです。

 植木鉢の土を庭に戻して片付けると、庭は見違えるように広くさっぱりときれいに

なりました。

 大満足の私は、これからはもう少し庭に心を配らなくてはと思いました。

 おじさんは二時間仕事をして、また来年もよかったら声をかけて下さいと帰って

行きました。

 お盆の前に気にかかっていた庭の整理が出来て本当によかった。おじさんに

心の底からお礼を言いました。

 でもよく考えてみると、世の中の主婦たちはこのくらいのこと多分自分でやって

いるのでしょう。

 昔から私の仕事でないと決めつけて、夫がするのは当たり前、好きでしている

のだからと、手伝うどころか感謝さえしたことはありません。そんな私に夫は文句

ひとつ言いませんでした。諦めていたのでしょう。

 今一人になってつくづく思うのです。夫だったらどのように生きているだろうか。

 私がいなくても何の不自由もなく、食事つくりも楽しく好きなご馳走を作っている

だろう。アイロンかけだってずっと夫の方が上手だった。

 趣味も沢山あってこれからやりたいことも話してくれた。、時間を持て余してボーと

テレビをみていることんなて絶対にないでしょう。

 私が代わってあげればよかった....。

 それでも一人で生きていくということは、まして年老いて行くこれからはとてもとても

大変なんだから。

 もう面倒くさい、どうでもいいと拗ねる私に、娘が言います。

「あと三年でパパの十三回忌。そして東京オリンピック見にくるのでしょう。まだあるよ

おじいちゃんの五十回忌は後七年。ママは頑張らなくちゃ」

 ああそうだね。大好きな父と夫のためにもう一頑張り。

 ええ? 私何歳になるの。

 

 
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