十二階から見えるもの [エッセイ]

 今日も一月中旬とは思えぬ暖かさ。十四度もあるという。

 八時前に息子を送ったとき、富士山が余りにも神々しくて見とれてしまい
寒さは感じなかった。

 九時ころ洗濯を干した時は、かなり風が吹いていたが、飛ばないようにするにはと
考えていたので、寒いとは思わなかった。

 そのあとはずっと部屋の中、エアコンなしでコタツに入っている。

 雲一つない真っ青の空を時々北に向かって飛行機が飛ぶ。ほほう自分もあんなに高い所を
飛んで来たかと、不思議な気がする。

 マンションの真ん前を環七が走っているのに窓を閉め切ると騒音は気にならない。
時々走るパトカーや救急車のサイレンや、午後五時「お家へ帰りましょう」と子供たちに
呼びかける声はとてもよく聞こえて、何だか下町の匂いが嬉しい。

 東のベランダから見ているとひっきりなしに常磐線の電車が行き来する。
早朝から深夜までよくもあれほどの人々が乗るものだと、わが街のチンチン電車を思って
つい笑いがこみあげてくる。
 電車の来ないときはすぐ近くの大きなショッピングセンターの、様々な店の看板が見える。

 目を左下したにやると、銭湯の青い屋根と大きな煙突がみえて一度は行ってみたいと思い続けている。

 北のベランダからは遥かに筑波山が見えて、喜んでいたのに十年くらい前に、その山を
真っ二つに切るように大きな細長い塔のような建物が出来た。ゴミ処理場とか。

 ここからは見えないが、下に下りて十分も歩くと私の好きな川が近くにあるし、
スカイツリーだってすぐそこに見える。

 日常生活も便利この上なく十分以内に大小のスーパーマーケットが四個所。
郵便局 警察 書店 食べ物屋さんに至っては無いものはない。
駅からマンションまで続いているのだもの、誘惑に負けないようにするのが大変だ。
 
 年に二、三回やって来る私は、ここが気に入っているけど住み着く気は毛頭ない。

 やっぱり住み慣れた我が家は一人で寂しいけれど居心地がいい。
 いつもいつも夫が傍にいてくれる。思い出を共有してそれがまたあり過ぎる位なのだから。

 子供たちは遠くで心配しているよりと思う気持ちはあるらしいのだが、私の本音を知って
いるので、今更の感なのだろう。

 幸せだった私の人生で夫との少し早い別れだけが誤算だったと言いきれる。

 贅沢を言ってはいけないよね。
 のんびりと自分の思うまま、好きなように生きている私なのだから。

 マンションからの眺めがいつの間にか自分のことになってしまった。

 さあ後はその大好きな我が家に帰る準備をそろそろと.....。

 
 
 
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ぼんぼちぼちぼち

今日はほんとにあったかでやしたね。
のんびりご自分の好きなように生きられる人生、一番幸せだと思いやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2020-01-09 22:19) 

dan

有難うございます。
今日は私の誕生日です。娘と二人で都内散策の予定です。
お忙しいぼんぼんぼちぼちさんのコメントは嬉しくて何よりのプレゼントです。
これからもよろしくお願いいたします
by dan (2020-01-10 09:43) 

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