春子さんの茶の間その16 [エッセイ]

 春子さんの茶の間の窓ガラスを伝って下りる雨粒がやたら大きい。
今日で三日降りつづく雨。豪雨被害のニュースがひっきりなしに流れている。
 未明には避難勧告も出た。
 全市内に出た。携帯が効いたことのない信号音で鳴り、ラジオがレベル4の避難勧告。
 避難するってどこへ。ここは川もないし崩れてくる山も崖もない。

 夜が明けて近所の人が一人二人と出てきた。
「びっくりしたねえ、でもどう考えてもここが一番安全な気がして笑えて来た」
 意見が一致してまた笑った。
 
 市や県の当局者はきっと一番安全な避難を考えてくれるのだろう。でも細かいことまでは
指示できるはずもないから最大公約数で仕切る。

 やっぱり市民一人一人が自分で責任を持つべき事柄だと少し落ちついたら、すぐ納得できるのだ。

 すっかり雨が上がって薄日さえ見えて来た窓を見ながら、春子さんいい勉強したと思う。
年を取って一人で生きて行くこれから先、何事も自分でと心に誓った大雨だった。

 おだやかに晴れた日が続くなんて絶対にない。
 晴れたり曇ったり降ったり嵐が来たり、雷鳴がとどろいたり、人の人生と同じだ。

 のんびり、焦らず、しっかり前を見据えて真っすぐ歩いて行こう。
 
 春夫さんが、きっと待っていてくれるその場所へ!
  
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リンさん

もうやめてあげてって言うくらい降りましたね。
コロナもそうですが、世の中何が起こるかわかりません。
経験したことがない大雨なんだから、どうしていいかパニックになりますよね。

by リンさん (2020-07-16 18:36) 

dan

有難うございます。
兎に角辛抱辛抱の毎日です。
やっと雨もあがって、来週はたった一つの
楽しみ「源氏物語を読む」がはじまります。
頑張りましょう。
by dan (2020-07-17 09:41) 

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