ちよっと嬉しくて ついホロリ [日記]


 先日来、夫が関わっていたきり絵の展示会がありました。

案内状を頂いてでかけました。

 夫がいなくなって早五回目になりきす。年一回皆さんの進歩の後を

観る度に、みんな元気でやってますから、と言われる度にああよかっ

たと思いつつ、帰りには切ない想いをどうすることも出来ない私でした。

 今日きり絵のお仲間の一人Nさんからお礼の電話がかかってきまし

た。最初から夫とこの会を立ち上げた女性です。「奥さん私八十歳にな

りました。」「十年以上も前初めて会った時と変わらぬ元気さで、頑張っ

て素敵な作品を出されていたので、私も感動しましたよ。」と話が弾む

うちに、彼女が月一回の研究会の時の夫の様子をぽつりぽつりと話

し始めました。

 十時から昼食をはさんで四時まで、みっちり作品作りをしていたよう

です。「今日はきり絵に行ってくる」と楽しそうに出かける夫でしたが、

会の様子など、あまり話したことはありませんでした。

Nさんによると、なにしろきり絵をしているときは、みんな一生懸命で無

駄話などしなかったけれど、食事時間の一時間はいろんな話が弾んで、

和やかな楽しいひとときだったそうです。そんな時夫がよく私の話をした

と言のです。私は耳を疑いました。私たち夫婦は仲が良かったと私は自

負してはいます。でもお互いにわが道を行くタイプで相談でもしない限り

決して干渉しなかったし、それでいいと思っていました。

 それでも私は夫のきり絵展は、友だちを誘って観に行ったし、ハーモ

ニカの演奏会も聴きにいきました。けれど夫は毎年ある私の絵の展覧

会を観にきたことはありませんでした。

 ドライブの途中などいい景色の場所があると、車を止めてよく二人で

スケッチをしました。自己流なのに月謝を払って習っている私より、遥か

に上手かった夫に観てもらいたくはなかったので、私に不満はありませ

んでした。こういう日常だったので無口な夫がみなさんに私のこと、何を

話したのでしょう。

 いつも旅の話をしたようです。私たちは本当よく旅をしました。

「二人で旅をするのは楽しかった」という夫に皆が「仲がいいのですね。

いいお話もいっぱいしたのでしょう」とひやかし気味にいうと「甘い話など

したことはないですよ。家内ひとりでうるさいくらい喋っていました。でも

二人でいくからいいのです。そばにいるだけ、それでいいのですよ」

夫はそう言って、みなさんもご夫婦で旅をするようにと、勧めたそうです。
 
 私は電話の向こうのNさんの声を聞きながら、つい涙があふれそうに

なるのをこらえることが出来ませんでした。

 私が思ってもみなかった夫の言葉でした。私のことそんなふうに思って

いてくれたのだ。言葉にしてはくれなかった分、余計嬉しく感じました。

 私の知らない所であの無口な夫が....。仲間にとはいえ私を話題にする

なんて考えたこともありません。
 
 電話が終わってからも、なんだかほんわか、ずるいよねえ。

私、また夫の大好きなお花を、いっぱいいっぱい買ってきそうなんです。

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リンさん

仲の良いご夫婦だったんですね。
お互いに自分の時間を持っていたのがいいのかもしれませんね。
私は太極拳と里謡をやっています。
里謡というのは、7.7.7.5で作る歌で、お年寄りに混ざって楽しんでいます。
danさんは、絵を描くんですね。
by リンさん (2012-05-21 23:16) 

dan

いつも有難うございます。
下手な絵は夫が亡くなってすぐ止めました。
里謡というのは初めて聞ききました。
私は今は、短歌と古文書と連句と子規に関
わるもの読んでます。
年をとって頭が痛いのですが、もう少し続けたい
と思っています

by dan (2012-05-22 14:17) 

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