都忘れの花白く   3 [昭和初恋物語]


  年の瀬も押し詰まった土曜日、千穂たち三人は忘年会をしょうということにな
った。光代の家で泊まりがけだ。母がチラシ寿司を作ってくれると言う。楽しい
一夜になりそうて、三人はお菓子やら果物、ワインもこっそり一本買ってきた。
 未成年なのに....と言いつつワインも少し飲んだ。「ねえ千穂、その後山部さん
とはどうなっているの。」友子が突然聞いた。「うん」「貴女たち恋人同士なんで
しょう」光代も続いた。「まあ恋人というか....」千穂がもそもそ言うのに「はっきり
しなさい」と二人が畳みかける。来年は二十歳になる三人だけど光代も友子も
今の所まだ恋というものに出会っていなかった。興味津津の二人に問い詰めら
れて千穂は少し顔を赤らめた。「二人でそういう話あまりしないのよ。私は山部
さんのこと好きだけど、向こうがどう思っているかはわからない」光代と友子は
顔を見合わせた。「好きに決まっているでしょう。好きだから交際が続いている
んでしょう。」友子が言い「千穂の事嫌いな人なんていないよ」と光代も力をこめ
て言った。
 その夜は結婚について話が弾んだ。千穂と友子は素敵な恋愛をして結婚した
いと言い、光代だけが多分見合い結婚するだろうと言った。「私はそういうの苦
手だし、顔も自信ないし、第一女らしくない私を好きになってくれる人なんかいそ
うにないよ」と片目をつぶって笑った。
 「そんなこと言わずに青春はこれからでしょう。自信を持って頑張りましょう」
三人は盃を上げて大きな声で乾杯をした。
 夜が更けて、もう寝ましょうという態勢に入ると友子はすぐ眠ったようだった。
暗闇の中で光代は、本当に恋ってどんなものなのだろうと考えていた。
 「起きてる?」と千穂が小さい声で行った。光代は「うん」とすぐ応えた。千穂が
小さくため息を一つついた。「私ね、山部さんのこと本当に好きなの、会社でも
彼のこと気になるし、デートに誘われると嬉しいし、夜なんか彼のこと考えてい
ると何だか切ないし。」光代は聞きながらそれが恋というものなのかと思った。
「でも山部さんが、私の事好きなのかは分からないの」そう言って千穂はまた溜
息をついた。「そこが肝心じゃないの。千穂自信持ちなさいよ女の私から見ても
貴女は女性として完璧よ。きれいで賢くて静かで、欠点がなくて嫌だーと思う位
中学の時から、自慢の親友で、私が男だったら好きになるのはきっとこんな人
だろうと、いつも思っていたのだから」二人は小さい声で笑った。友子が寝がえ
りを打った。
 

  

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